自分の行きたい時に好きなだけ居れる自由と、心地よさがあります。おしゃべりするのもよし、買い物帰りや学校帰り、散歩の途中などのふらっと立ち寄るのもよし お互いの存在を認め、その存在意義を確認しあいながらふれあうことで、いきいきとした日々を過ごせます。多世代にわたる様々な立場の人々とふれあうことで、心に刺激をうけ、リフレッシュや精神安定、高齢者の介護予防等につながります。子どもも、学生も、勤労者も、主婦も、高齢者も障害のあるなしにかかわらず |
助け合いの心が芽生えます。ふれあいの中から、自然に“お互いさま”として助け合いの心が芽生えます。 自分の能力を再発見し、豊かな経験とそれを活かす場を見いだせます。 お互い助け合いながら過ごすうちに、自分の新たな能力に気づいたり、今まで培ってきた知恵や、特技に気づき、それを活かす場を見いだせます。また、それは、その人の生きがいへもつながります。 自分に自信を持つことが出来、ひきこもりや閉じこもりを防ぎ、外(地域)へ出るきっかけとなります。障がい者の社会参加への足がかりとなります。子どもは社会性や主体性、リーダーシップが育ちます。 子ども達は、地域のさまざまな大人にほめられたりしかられたりすることで、社会性が芽生えます。 |
情報交換の場となり、お互いの理解が深ることで、信頼関係が生まれます。また、それぞれの抱えている問題や悩みを共有し、相談し助けあえる関係になります。何気ないおしゃべりの中で信頼関係が生まれ、悩みが解決したり、必要なニーズが生まれます。例えば、1人で子育てをしているお母さん、なかなか地域に関わることができない勤労者、孤独な介護に悩んでいる人など、信頼ある仲間ができ、心強く安心した生活が送れるようになります。 いろいろな助け合いのできる関係に広がります。助け合いの気持ちが、地域にあるさまざまな問題などに取り組んでゆくきっかけづくりになります。 |
顔が見える地域になります。 隣に誰が住んでいるのかわからない、隣で事故が起きていたことに気づかない、というような地域では寂しいものです。 顔が見える地域は、安全で安心な地域づくりへとつながります。顔が見える地域は、例えば、幼児虐待等の様々な事件や不審者の侵入等の防犯対策、独居老人の孤独死といった事故も防げるのではないでしょうか。 地域の住民意識を高めます。人と人とのつながりが広がることで、地域の問題を協議することも行われ、地域への関心が高まり、地域に生じている課題や問題に対し連携して取り組んでゆくきっかけづくりになります。 |
ほかにも多くの居場所でこのような「クララ効果」があると聞いています。
「ふれあいの居場所」では、人と人とが関わり合うことで、人が本来持っている能力を呼びさまされることがあります。その人自身の力が発揮され、その人らしさが輝いて見られます。そのような居場所の効果を「アルプスの少女ハイジ」の中で、車イスの少女クララがアルプスという場の雰囲気の中で立ち上がった話にちなんで名付けました。
要介護4から「阿波踊り」へ
一人暮らしで83歳女性。8年ほど前から脳血管障害で手術し入退院を繰りかえしていた。その後、自宅での生活を希望したが、要介護4と認定され入浴もできず気落ちしていた。
知人が麻野信子さんに連絡し、「幸せの家・ありがとう」に参加するようになった。“この家に来ると、楽しくて元気になる”「この家は不思議な家。きっと幸せになる何かがある」と。それでも家に帰るとめまいを感じ不安にもなる。
また、元気になると来るのを断られると心配していたが、「あなたがいると、とっても話が盛り上がるのよ」と感謝された。確かに、彼女の周りにはいつでも笑い声が絶えない。「みんなのボランティアさん!」と声がかかる。
そんなある日、土地柄らしく阿波踊りのボランティアの方が来られた。踊りが盛り上がる頃、次々と元気な高齢者やスタッフが輪の中に入っていく。ふと気がつくと踊りの輪の中に彼女の笑顔を見つけた。
ほとんど寝たきりの方が「歌姫」に
87歳になる女性。骨粗鬆症が悪化し、圧迫骨折で8ヶ月間ほとんどベッドの上で寝たきりの状態で過ごした。
その間、人との交わりも少なくなり、もともとおしゃべり好きの人だったのにだんだんウツのような傾向がみられるようになった。やっと骨折の痛みがひいてから「高湯の里」に行くようになり、地域のいろいろな人が参加する「居場所」のスペースにやってくる小さな子どもたちや、自閉症や引きこもりの若者達とかかわりを持つようになった。
小さな子どもの手を引いたり、子どもたちとおやつを食べ、散歩をしたりするうちに、体も動くようになり、元気なかつて明るいその方らしさが戻ってきた。若い頃地元で小さなお店屋さんを開いていた方で、お客さんを相手にいろいろな話をしたり、相談事を聞いたりという人だったそうだ。
その時のような「居場所」でのいろいろな人とのふれあいが元気を呼び戻すきっかけになったようだ。
今ではマイクを持ち(と言うか、離さず?)、民謡・童謡から歌謡曲まで、カラオケのレパートリーを次々と歌い上げる「歌姫」に。そこに集まる人の存在が一番のリハビリだった。
杖をつかないと歩けない元美容師さんが立ち上がって髪を切った
居場所には定期的に来られる女性。下半身が不自由なので杖が手放せない。みんなとの外出にも積極的に参加していない。
自由な居場所なので一緒に何かやらなくてはならない、ということはない。
でも、○○さんらしさってと考えた「もうひとつの家」の稲葉ゆり子さん、「○○さん、今度ここに来てる人の髪を切ってよ、みんななかなか一人で美容院へ行けないのよ」と元美容師さんだった彼女に声をかけた。すると、次の時、かつて愛用したカットのセットを持ってやって来た。床に新聞紙を敷いてMさんが座り。元美容師さんは椅子に座ったままでカットを始めた。
ところが…右手にはさみ、左手でMさんの髪をさわる元美容師さんが立ち上がっている!みんなの見守る中で真剣な顔。「はさみを持つと別人」とその時から「居場所の美容師さん」として活躍してくれている。
3歳の子どもが「私も小さい子のお世話をしたいの」
居場所のアイドルNちゃんは3歳。
おうちでは3人姉妹の末っ子でお姉ちゃんたちにもかわいがられている。
そんなNちゃんも、「もうひとつの家」に来ると、赤ちゃんのAちゃんのお姉ちゃんという立場。Aちゃんが泣くと近くに行ってあやしたり、大人に「おっぱいなんじゃないの?」と報告したりと、なかなかのお姉ちゃんぶりを発揮している。
食事の準備もお片づけも「お手伝いする〜」と積極的。おうちでお手伝いしようとすると「危ないからちょっと待っててねっ」とか、忙しいママは「いいから、いいからそこにいるとちょっと邪魔よ!」ということもある。
でも、「もうひとつの家」の大人たちはいろいろなお手伝いをさせてくれる。
大人が赤ちゃん扱いしようものなら「私は小さいこのお世話がしたいの、お世話されたくなんかないの!」とおかんむり。
親以外の大人がゆったりとした心で子どもに接することで、子ども自身も人の役に立つ自分を意識させてくれる。居場所は子どもたちの心豊かな育ちも支えている。
若者も受け入れられて…
「俺は、結構悪かったんだよ」と照れたように話す19歳の青年。コミュニティ喫茶「欅」でボランティアをしている。
少し複雑な家庭環境で育ち、持病もあって体が丈夫とは言えない。本人が言うようにちょっと突っ張っていて高校も途中でやめ、その後就職もしたが長続きしていない。
そんな彼が紹介されて「欅」に来るようになった。
人間関係を作るのがどちらかと言うと苦手(と言うか、下手な)彼は、ボランティアの大人たちや居場所に来る高齢者や障害者の中で、彼自身まるごとの存在を受け入れられ、ボランティアとして手伝うというだけでなく、ここが彼自身の心の拠りどころともなったようだ。
別の「地域子ども教室 まじゃりんこ」にもボランティアで参加するようになり、小さな子どもたちとふれあっている。そこではスタッフとして「さぽうと会議」にも参加し、きちんと自分の意見も言う。
暖かく受け入れられ、だからと言って甘やかされるのでもない、自然な人との交わりができるこの居場所だからこそ、彼の存在が輝き始めているように見えた。