「地域助け合い基金」助成先報告
映画「大空へはばたこう」から入所施設について考える実行委員会
北海道札幌市東区
助成額
150,000円(2024/06/05)助成⾦の活⽤内容
この会は、2024年4月1日に設立。虐待事件、不妊処置問題、旧優生保護法被害など様々な事件が、道内各地で起き続けています。なぜ北海道でこんなにも事件が多いのかと悲しみ、怒りがこみあげてきますが、それだけでは変わらないことも感じていました。そんな時、大阪のインターネット放送局パンジーメディアが制作した映画「大空へはばたこう」を見る機会があり、上映会を開催し、地域の福祉についてたくさんの人と一緒に考えたいと思ったことがきっかけです。映画のテーマは「入所施設」です。これまで障がい当事者が訴えてきた成果もあって、国・地方自治体は共生社会を目指し、少しずつ地域移行が進んでいます。しかし、重度と言われる障がい当事者は依然として「入所施設」で社会と分けられて暮らしています。自分で選んで施設に入ったわけでもないのに、そこで虐待までうけている人がいるのが現実です。
この映画では、自ら表現することが難しい障がい当事者が、入所施設や親元から自立することで起きる変化が描かれています。その当事者の表情は、いきいきとしています。支援があれば自分らしい暮らしは実現できると改めて教えてくれました。その姿はまさに私たちの伝えたいことなのです。
2025年3月までに、札幌市、当麻町、西興部村、別海町、函館市を回り、映画上映とシンポジウムの開催を計画しています。上映会とあわせて、シンポジウムかグループワークを行います。これまで「施設必要派vs脱施設派」という構図で語られることが多かったこのテーマですが、対立関係のままでは新しい福祉の時代へと変わることができないと感じています。同じ地域で暮らす障がい当事者・支援者・家族・地域住民・行政等の様々な人たちが、立場の違いを超えてお互いの意見を尊重し、視野を広げる企画になるように取り組んでいる最中です。また、この映画はバリアフリー上映にも対応しています。会場でも合理的配慮としてバリアフリーな会場、手話通訳、要約筆記、わかりやすい表記、フリガナ付き資料の配布といったことを行っていきます。このような配慮は、障害のある方だけではなく、高齢者やベビーカーを押す人、日本以外の国の方など様々なひとにとってやさしい環境となります。参加者の心のバリア解消から、地域全体が障害があってもなくても暮らしやすい共生社会への気づきの一歩となる活動を進めていきます。
活動報告
この実行委員会は、日本で一番入所施設の数が多い北海道でより多くの地域移行をすすめ、共生社会の実現を目指すために活動をしました。実行委員会で企画した映画「大空へはばたこう」の上映会とシンポジウムは、北海道の4カ所で開催することができました。開催地と参加者は、札幌市 71名、当麻町 49名、西興部村 51名、函館市 77名でした。各地域ごとに地元の福祉関係者、団体、行政の協力を得られました。実行委員会では初対面の方々も多く、互いのことを知ること、それぞれが考える目的・課題を共有する等の関係づくりも含めて企画・運営行ってきました。様々な立場の参加者の方々から意見を聞くためには、垣根を超えた地域のネットワークを構築する必要がありました。さらに実行委員のほかに各地域のことをよく知る方へ依頼し、協力委員として積極的に周知、当日の会場設営などの協力を頂き、開催することができました。
この映画は、障がい当事者が地域で実際に生活している様子を見ることができ、地域の生活を経験したことのない障がいのある方、関係者にとって、大きな意味があったと感じました。支援を受けながら暮らしている様子は、なかなか見ることができないものです。映像を通して自分たちの暮らしと改めて比較できる機会となりました。
この映画では、実際に虐待を受けていた障がい当事者が出演しています。転んだら危ないからと車いすに拘束され続け、自己選択、自己決定を諦めさせられていた女性が、入所施設から地域の生活へ挑戦する姿がえがかれています。彼女は、時間がたつにつれて、歩けるようになり、今は仲間たちと事業所へ通い、資源回収のお仕事をしています。また、同じように入所施設から地域の生活へ挑戦した男性は、テレビのチャンネルを自分で変えるという施設ではすることのなかった行動をする様子をみせ、施設の職員を驚かせたという内容もありました。一方的に誰かが決めた暮らし方ではなく、地域のつながりや支援の方法を試すことで、障がい当事者の表情は、笑顔に変わることを教えてくれました。
また、上映会では、必ずシンポジウムもセットで行いました。シンポジストには、地元の様々な立場の方にご出演頂きました。入所施設で生活していた当事者からは、「家族から離れて寂しかったが、あきらめていたこと。」、親御さんからは、「近くにそれしか選択肢がなく、入所していくのが当たり前だと今まで考えていたこと」など様々な立場から意見が出された時間となりました。
シンポジストとして登壇することが初めてだった方もいましたが、その方は、この映画をみて、自身の生活について親と話し合うことができたそうです。さらに、この方は、人前で話すのは小学校の時に一度だけとのことでしたが、この機会をきっかけにシンポジストとして発言することができました。障がい当事者をはじめ、関係者と協力しながら上映会とシンポジウムを開催することで、人が出会う・集まるということは、それだけの力があることを証明してくれました。映画の簡単な説明やシンポジウムの内容は、報告集にまとめていく予定です。欲しい方がいらっしゃれば、ご連絡お待ちしております。
最後になりますが、このような機会を作るには、資金協力なしでは、行う事ができません。北海道は、広く、人口や機能が分散している地域性もあり、集まるにもお金がかかります。さわやか福祉財団様から頂いた助成金なくしては、この活動が進められませんでした。改めて、感謝申し上げます。
参画した委員からも仲間が出来てこれからの励みになる。力になったとの声もありました。この映画上映とシンポジウムを通して様々な立場の人たちが集うネットワークづくり、課題解決につながるヒントの共有ができたと感じています。
今後の展開
この実行委員会は今後、どのようになっていくかは決まっていませんが、ここで築いた個人・団体同士の連携は地域の課題を解決するために活かされる土台となったと感じています。上映会で共有した「障がい当事者が笑顔になる暮らし」を実現するために、実行委員会発足時の想いである障がい者虐待防止につなげていきたいです。引き続き、障がいのある人への人権侵害や虐待、入所施設、地域の暮らしを考えるネットワークづくりを着実に進めてまいります。障がいのある人が生活しやすい地域をつくることは、全ての人が生活しやすい地域づくりにつながると考えています。
最後に、映画上映会での「シンポジウムの内容のまとめ」や参加者からのアンケートや実行委員会での総括を含めた報告集の作成を行います。この報告集は実行委員会・上映会・シンポジウム・で様々な立場の人が発言された葛藤・悩み、想い・現実をそのまま載せる予定です。今後、障がいのある人の生活を考えるときの参考になるものにできればと考えています。