「地域助け合い基金」助成先報告
ティーチみやぎ
宮城県仙台市青葉区 ウェブサイト助成額
150,000円(2024/01/18)助成⾦の活⽤内容
<目的>
①自閉症スペクトラム(以下自閉症と略記)発達障害の人(子ども~大人)とその家族が、地域で安心して暮らすことができるようにする。
②自閉症支援のスタンダードになっているTEACCH(ティーチ)プログラムの考え方と育児そして支援の方法を宮城県内に普及する。
*TEACCHプログラムとは、訓練して子どもを変えるのではなく、家族や支援者ら大人がよく学び、訓練されることによって、自閉症の特性に合わせた適切な育児、療育、教育ができると考える、包括的な支援システム。
<ねらい>
①自閉症の人(子ども~大人)の親御さんの子育てや生活の悩みを受け止め、子どもの特性理解を図りながら、親と一緒に具体的な対応策を考え出す。
②ケースの必要に合わせて、数年または10年以上の継続した相談を行い、その子(方)と親に寄り添い続ける。
③自閉症の人を支援する保育士、教員、支援スタッフの相談を通して、支援者に対して自閉症の障害特性、対象児者の特性の理解を進め、一人ひとりに合った最適な支援のあり方を伝える。
<地域とのつながり>
①相談対象者は仙台市のみならず宮城県全域とする。したがって家族を通して子どもの一次支援機関である所属保育所、幼稚園、学校、福祉事業所と情報の共有を図る。
②利用者によっては子どもについての情報共有と、支援の方向性を確認し合うため、その子の担当相談支援事業所を中心にした関係支援機関のネットワークつくりを推進し継続して支援するようリードする。
③宮城県から県内3地域において障害児等療育支援事業と宮城県発達障害マネジャーの委託を受けている(一社)みやぎスクエアサポートとの情報共有を図り、できるだけ一人漏らさず支援を受けることができるようにする。
活動報告
1 無料相談
・活動内容:毎週月・水・金曜日に予約にて1時間半
・相談者:2歳~34歳の子どもを持つ保護者、本人
・取り組み:年齢、特性等様々な方々が来訪。中でも約10年間継続している方は、母親のみならずしばしば両親で来訪している。事前に自閉症の理解、子育ての基本、構造化(分りやすい子育て)を学んでいたため、相談を通して子どもの進路、学校や家庭での対応を親自らが工夫して実践し、これを相談で検討し合うことができた。このように保護者の積極的な対応の工夫を踏まえた相談のケースがあった。
・また20代の青年の例では、始めの生活介護Aに馴染めず、進路先に苦労したが、1年半前に支援会議で検討を重ね、別の法人の生活介護Bに通所を変えたところ、新たな支援会議(相談事業所、B生活介護事業所、自立訓練(生活訓練)、グループホームとティーチみやぎとが定期的に前向きに支援会議など確実なネットワークを作り上げることにより、新しいB生活介護への適応、定着が見られる。
2 個別研修
・相談者は半数近くが母一人だけの研修ではなく、両親一緒の研修であった。このように両親一緒の研修は子育てについて、自閉症の子育ての基本的な考え方、子どもの発達に関する共通認識を得ることができ、極めて望ましいことだった。この研修により、その後の相談において、子育てと自閉症理解の上に立った共通言語ができ、さらに充実した相談に進むことができた。
ただし相談に来ている人たちの研修希望者は、特に父親の仕事優先の関係上、あきらめる両親もいたのが残念である。この件については今年から計画している、日曜日の親のための研修会を計画している。
3 親と支援者のための自閉症スペクトラム連続研修
・地域の市民センターでの実施
・毎週1回の5回連続研修(2時間×5回)
・参加者11名 保護者9名、保育士1名、グループホーム保育士1、定員15名に11名参加ということ、少人数での為、和気あいあいと進めることができた。特に質疑応答は予定の30分を超えるほど盛況であった。
<参加者の声>(研修会アンケートより)
①「自閉症について詳しくわかり,自閉症の子の行動、特徴が分った。それにどう対してどのようにしていけば良いのか、自立していくのにどのようにしていけば良いのか等、分りやすかった。自閉症の子の子育てという研修だが、定型発達の子、小さい未満児の子にも使えるものがあり、役に立った」(保育士)
②「子どもの言動の根拠(特性など)を知ること、気づくことができました」(5歳児の母親)
③「息子の困り事に対して、どんな特性から来ているものなのかが少しわかり、ためになりました。息子の見えている世界を少しでも理解しようと思うこと、それを尊重すること、忘れず向き合いたいです」(中1母)
」
今後の展開
仙台市には2カ所の発達相談支援センター、そして仙台市自閉症児者相談センター等があり、自閉症支援は組織的には充実しています。
しかし、相談者が多数でそれぞれの機関が忙しく、定期的な相談や保護者の継続的な学びの場は十分とは言えません。政令指定都市故に保健師や生活支援コーディネーターとの連携が不十分で、保護者にとって、わが子の自閉症について理解や子育ての基本をじっくり学ぶ機会が少ないようです。
そのような中、ティーチみやぎには予約の電話1本で気軽に相談できる「無料相談」そして、「保護者の個別研修」「親のための自閉症スペクトラム連続研修」があります。その骨子は子どもの特性を確認しあいながら、その子に合わせて(オーダーメイドで)構造化(分りやすい手立て)を行うことです。
特に十数人と少人数で実施する5日間の連続研修では、お互いに情報交換をしながら基本的な自閉症の理解、子育ての基本を系統的に学ぶことができました。この毎週連続の研修で、他にはない受講生を大事にした学びの会となりました。今後とも両親の継続的な相談と研修の両輪で保護者を支えていきたいと思います。
また平日の5連続研修(半日)に加え、日曜日の2週連続(全日)の親のための研修会も隣の名取市に近い会場での予定です。
これらは小規模で継続的な活動ですが、まさに草の根運動のように自閉症スペクトラムの保護者とその子どもに母親に支援のネットワークがひろがるよう、その子の発達を支えていきたいと思います。
保護者の中には障害者支援の仕事に関わっている方があり、この方も研修を熱心に受講し、わが子のみならず自閉症一般にも大きな理解を示している方いらっしゃるので、このような支援力のある方々を、よりプロの支援者になるように、相談や研修を通して学び合い、自閉症支援のプロの支援者への道を支えようと考えています。
さらに支援者支援に関しては、自閉症スペクトラムの次期専門家を育てるため、支援学校教員、保育士そして言語聴覚士を交えた夜間の自主勉強会(会費500円)を毎月1回継続して行い、本地域助け合いの波を起こせる人材の育成を図りたいと考えています。