「地域助け合い基金」助成先報告

NPO法人 全国夜間中学ネット

兵庫県神戸市須磨区 ウェブサイト
その他

助成額

144,000円2023/07/07

助成⾦の活⽤内容

平成20年頃から「学力をお金で買う」という風潮を感じるようになりました。
教育を経済用語で語ることも多くなりました。
「努力に見合う成果」や「費用対効果」が教育現場でも求められるようになりました。
しかし教育の成果は、費用には換算できないし、成果もすぐに出るわけではありません。
子どもたちには「悩み、傷つく」ことも成長の栄養剤になります。
一方で、「悩まず、傷つかずに」学力を伸ばしてやりたい親心により、子どもたちの習い事への出費を求められるようになっています。
そして、経済格差がそのまま学力格差となってしまっている現状があるのではないでしょうか?
私たちは、神戸市に2021年に設立したNPO法人です。学習成績の低さにより自己肯定感が低く、自尊心を失いそうになる子どもたちを見てきました。そういう子どもたちは「成績が悪いのは努力が足りない」「自分には能力がない」「自分は存在意義がない」という自己否定感を持って過ごしています。
しかし真の原因は、経済格差が学力格差を生み出しているということです。神戸市では中学3年生は80%が通塾しています。保護者の事情で家庭に充分な学習環境のない子どもたち、通塾したくても経済的理由でかなわない子どもたちを、何とか支援し、自己否定することなく、高校進学をかなえさせてやりたいという思いで活動を始めました。私たちとともに、子どもたちの高校進学をご支援いただければ幸いです。
この活動は、学習支援を手伝ってくれる20名の大学生の、謝礼として活用させていただきたいと思います。

活動報告

<助成金を通じてできた活動>
経済困窮家庭の中学生に対する無料の学習支援事業のボランティア大学生の確保ができ、中学生が身近なロールモデルとして大学生と一緒に勉強する中で、達成感や学力の向上とともに人間関係の形成経験を積むことができた。

<進めるうえでの苦労>
特に苦労というよりも、保護者の方からの感謝をいただいたり、子供たちが笑顔で学ぼうとする姿が印象的でした。

<社会全体での課題>
学校外教育費の格差:学校以外での教育活動にかかる費用が、教育費の大部分を占めています。しかし、所得が低い家庭ほど、学校外教育費が少なくなっており、子どもたちに十分な学習機会を提供できないという問題があります。学校外教育は、学力だけでなく、文化的な体験や人間関係の形成にも重要な役割を果たします。そのため、学校外教育費の格差は、教育格差を生み出す一因となっています。

10歳の壁:子どもの学力に関して、9歳までは家庭の所得による差はそれほど見られませんが、10歳を境にして大きな差が出てしまうという現象があります。10歳は、小学4年生になる年齢で、学習する科目や内容が難しくなる時期です。このため、学校以外での学習時間の長さが、学力に直結しやすくなります。低所得家庭では、子どもを塾に通わせたり、親が勉強を見てあげたりすることが難しいため、学力に差がついてしまいます。

貧困の連鎖:低所得家庭で育ち、十分な教育機会に恵まれなかった子どもは、大人になっても貧困状態が続く可能性が高くなります。学力が低いと進学先が限られてしまい、所得の高い職業に就けるチャンスも少なくなるからです。このようにして、貧困は親から子へと連鎖していくことになります。

以上のように、経済格差が教育格差につながる社会的背景には、学校外教育費の格差、10歳の壁、貧困の連鎖などがあります。これらの問題を解決するためには、教育の機会や質を平等にすることが必要です。

<子どもたちの声>
Aくん  勉強は苦手だった。いつも周りの人たちがさきさき勉強していることに焦りがあったけど、この学習塾で予習ができるようになり学校の勉強がよくわかるようになった。
Bさん 勉強は孤独だと思ってたけどいっぱい仲間がいて安心した。

<地域とのつながり>
同じような学習支援団体が神戸市にあり、皆さんで神戸市学習支援協議会というグループを作って思いを共有したりノウハウの交換をしたりできた。

今後の展開

授業内容が「わかる、できる」という自己肯定感を持ち、教室での居場所を得られるように。
当法人は夜間中学の運営を目標にしていますが、同時にすべての人が希望する教育機会を確保する実践活動が基本理念でもあります。そのため経済的理由により学力格差が生まれている現状や様々な理由により登校できていない不登校の状況の解消に対する教育活動を事業として実施しています。
経済的理由により塾に通うことができない中学生を対象に週3回18:00~20:00に学習指導を実施しています。教員OBと大学生の協働により指導を行い経済格差と学力格差の連鎖を解消し生徒自らが希望する進学が叶うよう自己実現を目指します。同時に別教室では不登校等により中学教育が受けることができなかった生徒に各個人の実状に合わせたカリキュラムで授業を実施しています。学齢期の生徒については学校の出席となるよう申請をしています。

私たちは教員OBであるため「学力をつける」ことを1番の目標にしています。学校の授業が分かるようになることで授業内容が「わかる、できる」という自己肯定感を持つことができて、教室での居場所を得ることができます。
昨年1年間東灘区住吉駅近辺で学習支援塾を実施しました。その結果8人の受講生のうち7名が希望した公立高校に合格することができました。生徒たちの感想はこの塾での勉強で成績が伸びた実感や勉強のやりがいをとして記述していました。
この事業の重要性を認識し今年度は5月から長田区の長田公民館を会場にして学習支援塾を開設しました。授業初日より20人の定員がすぐに埋まりこの地区での要望の強さを感じております。

添付資料