「地域助け合い基金」助成先報告
「子ども寺子屋カフェ」を運営する会
福岡県宗像市 ウェブサイト助成額
150,000円(2022/04/21)助成⾦の活⽤内容
■毎月第二日曜日 「子ども寺子屋カフェ」の開催
一人親家庭、発達障がいなどさまざまな事情で子育てなどで困難を抱えている家庭、一般家庭の小学生の子どもが対象。
学習支援、北欧の教育にヒントを得た教育ワークショップ(アート、身体運動、身体表現、音楽、演劇、創作活動など)、おやつの提供を行う。子どもは10~15人参加し、大学生ボランティアが4~5人、スタッフが5人ほど支援する。
■毎月最終日曜日「家族ダイニング・さんさん」の開催
一人親家庭、発達障がいなどさまざまな事情で子育てなどで困難を抱えている家庭、一般家庭の子どもと保護者が対象。
子どもの孤食を防ぎ、親子のふれあいの機会提供を目的として、親子(子どもだけも可)が集まり、昼食を作っていっしょに食事。食後は保護者は交流会、子どもはスタッフ、大学生ボランティアと外遊びを行う。子どもは平均12~15人、保護者は7~9人ほど、大学生ボランティアが3人、スタッフが3人ほど参加し、25~30人ほど集まる。
食材はフードバンク福岡と利用組合かのこの里から一部提供。それらを困窮家庭にも配布している。
年2回の地域住民(主に高齢者)との交流会、年一回の教育福祉講演会、不定期の子育て相談なども実施。
■本助成金を活用して
・一人親家庭や発達障がい児をもつ家庭の子どもたち、あるいは当会の北欧の教育方法を生かしたワークショップに参加したい子どもたちに、子どもの感受性、情操を育む質の高い教育を実施する。
・保護者を含む地域の大人たちに子ども育成の活動に参加してもらい、地域での子育て意識の涵養に努める。
・高齢者などにも参加してもらう機会をつくり、三世代交流の場として運営する。
・教育、児童福祉に関する講演会を行い、保護者、市民への啓発をはかる。
・子どもの教育に関する個別相談も受けつけ、子育て支援を行う。
・これらをいずれも社協、NPO市民活動センター、宗像市などとの連繋を取って実施する。
活動報告
「子ども寺子屋カフェ」と「家族ダイニング・さんさん」という毎月2回の活動に、広報等を通じて「なでしこ会」(宗像市母子寡婦会)のメンバーが数人参加するようになりました。一人親の困窮状態など説明いただき、参加型子ども食堂の「家族ダイニング・さんさん」で毎回実施する簡易フード・パントリーで、食材、米を配布しました。なでしこ会の活動にゲスト参加したり、行政の一人親支援制度の勉強会などをしたりして、相互交流関係ができたのが一番の成果でした。
他の自治体よりも支給条件が厳しい宗像市の就学援助の条件改善などの陳情も今後やっていく予定です。
社協の第2層生活支援コーディネーター(前任から引き継ぎ現在は酒見美加さんが担当)にお願いして「家族ダイニング・さんさん」で、一人暮らしの高齢者などが無料で食事が摂れること、簡易フード・パントリーを実施していることの掲示をお願いしました。簡易フード・パントリーは、生活保護受給者などの利用がありましたが、回数は少なかったです。一人にお話を聞くと、他者の目が気になるとのことで、生活保護受給者を見る世間の意識、当事者の負い目の意識の払拭が課題とわかりました。
市役所の農業振興課を介して、宗像市の農業生産者でつくる農産物の直売所、利用組合「かのこの里」との連携ができ、毎月最終金曜日、売れ残った野菜、ときには米などの食材提供を受けました。一年継続して、その絆も強くなり、新たな地域への広がりといえます。生産者の方も一部当会の活動に親子で参加しました。
また、地域の金融機関である遠賀信用金庫が、社会貢献として宗像・遠賀地方の子ども食堂への食材提供、物価高騰支援金の助成などを実施し、当会もその支援にあずかりました。これも地域の企業とのつながりになります。
22年10月に教育福祉講演会を実施して、発達障害の専門家である金原洋治先生(かねはら小児科院長、下関市)にお話をいただきました。当会の活動にも数人、発達障害の子どもが参加しており、保護者の相談にも乗ってきましたが、市内の発達障害児と親を支援する会のスタッフが参加し、発達障害の子どもをもつ保護者との関係を新たにつくれました。また同じく金原先生の紹介で、岡垣町の医療的ケア児の訪問看護ステーション「にこり」との交流も始まりました。
当会の活動はささやかなもので、たかがしれていますが、支援が必要な人との関係、そして支援を希望する団体、人々との関係ができて、支援が必要な人たちをわずかなりとも支えることで、微力ながら地域に貢献できているのではないかと考えます。
助成金の主たる使途として、ワークショップの講師、ファシリテーターの報酬があります。スタッフもそれなりの経験がありますが、対象は小学生とはいえ、本物のアート、表現活動を味わってもらいたいと願うのが、当会の意図です。そのために、プロのアーティストの方に来ていただきました。これはデンマークの教育のスタイルでもあります。
4月は、イギリスで現代舞踊を学んだ大塚祐三子さんと、自然と交流する身体の遊びをいっしょにしました。6月は同じくフェルトアートをヨーロッパで学んだテキスタイル・アーティストの清水まゆみさんに、フェルトの石けんづくりを子どもたちとしていただきました。これは前にも一度やり、子どもたちに人気のワークです。9月は太宰府の児童劇団、劇団道化の西村健二さんのご指導で、子どもたちが靴下で犬の人形をつくり、人形劇にチャレンジしました。23年の1月は、ケルトの音楽を歌い、演奏するMoriwadaユニットに、アイルランドのお話や絵本を使っての歌芝居などしていただきました。本物の力はさすがで、子どもたちは騒ぎもせず、集中して取り組んでいました。
11月は、フィンランドのヒンメリづくりをしました。外部の講師は呼ばず、代表の清水がファシリテーターとなりました。北欧関係のものは清水が専門家です。
子どもも参加して行う質の高い表現活動ワークショップで、子ども時代の高い感受性を刺激し、豊かな情操を育むことができたと思います。
今後の展開
当会の本来の意図は、代表の専門分野であるデンマークの教育にみられる自由な学び、表現活動、身体運動、自然との親しみを、日本の子どもたちに体験してほしいというものです。知識の詰め込みが顕著な日本の学校教育では不足しているからです。こういう教育は富裕層の通う私立の学校では十分になされていましたが、公立学校ではあまり味わえません。
無償で質の高い体験学習をできる場として、6年間やってきましたが、富裕層の親はそうした教育の重要性を理解して、当会の活動によく参加し、逆に当会がターゲットとしている困窮家庭は、日々の生活に追われ、学校教育についていくので精一杯です。そうした家庭に地道に働きかけ、子どもの行きたいという気持ちを刺激することで、この矛盾構造を何とか改善したいと考えます。
市の広報紙などを通じて、少しは効果がありましたが、宗像市にこういう場所があることを、地域の方により知っていただき、それが必要な家庭の子どもたちにもっと参加してほしいと願います。
活動する中で、発達障害をもつ子どもがいる家庭、子どもが学校でイジメにあっている家庭、一人親家庭などの保護者の相談、仲介などの援助活動を行ってきました。
宗像市は成績優秀な子どもへの支援は手厚いですが、一人親家庭、困窮家庭への支援は、周辺自治体と比べて十分とはいえません。たとえば、福岡県では、福岡市、北九州市、隣の岡垣町など、子ども食堂自体への助成金を出す自治体が増えていますが、宗像市はそうした支援もなく、子ども食堂の数も多くはありません。遠賀信用金庫が周辺自治体、社協に協力を依頼し、子ども食堂への食材提供、物価高騰支援金助成を実施していますが、宗像市の社協は対応できないと斡旋業務を断っています。就学援助も福岡市から宗像市へ引っ越してくると、福岡市では受給できたのに、条件が厳しくなるために、こちらでは打ち切られます。
本来は行政や社協がすべきことですが、市民の側として、それらの不足を補うべく、できるだけのことを模索しながら、やっていくつもりです。そのためには、市民のみなさんの物心両面でのご協力が必要になります。もちろん当事者といっしょに行政にも声を伝えていきます。
市民や親子が顔を会わせて、わきあいあいと昼食をつくって食べる参加型子ども食堂「家族ダイニング・さんさん」では、知らなかった市民同士がつながり、失われつつある地域の絆の再構築に寄与しています。食後の簡易フード・パントリーでは、困窮家庭、一人親家庭に食材を供給して3年になります。この活動の目的である「たすけあい、わかちあい」をさらに継続、充実していきたいと思います。