「地域助け合い基金」助成先報告

NPO法人 こえとことばとこころの部屋

大阪府大阪市西成区 ウェブサイト
居場所その他

助成額

150,000円2020/10/20

助成⾦の活⽤内容

近年、釜ヶ崎エリアでは高齢化と重症化が進んでいる。単身で暮らすこの街の人々には制度としては医療や福祉が整っているが、体が不自由、精神的にもしんどさがあるなどの理由から外出する機会も減っている。限られた人(専門家)としか接する機会がない。周辺団体の山王訪問看護ステーションと意見交換するなかで、ご本人の前向きな気持ちでの社会への接点や地域の居場所につなげるきっかけづくりは専門家だけではできず、医療職ではない第三者が介入することで、その緒が生まれるのではないか、ということが語られた。(これまで当団体に来ていた学生インターンを山王訪問看護ステーションの活動に一日体験参加した時に、当事者がとても楽しみに学生とであっていたことの経験からも、この意見が生まれている。)そこで、「であいと表現の場」をつくる当団体と連携し、主に単身の高齢者を中心に地域全体による見守り活動や、訪問活動を通じて、社会との接点をつくるモデル事業として実態化しようというものである。単発ではなく継続的に行うことが不可欠であると考えている。対象となる方との関係性をゆっくり作っていく必要があるが、本モデル事業を通じて検証してゆき、長期的な関わりを目指す。

活動報告

●内容 釜ヶ崎に関わる3人の執筆者による連載エッセイ
1,大阪市西成区釜ヶ崎で活動する詩人の上田暇奈代が、向かいの訪問看護ステーションの施設長から、地域に暮らす利用者さんの部屋にいっしょに行ってほしい。地域との接続点を作ってほしい、と言われたことをきっかけにしたエッセイ。
2,大阪市西成区釜ヶ崎に暮らすひとりの男性(出会ってしばらくで末期癌とわかる)と出会った看護師であり、臨床哲学者である西川勝が、この男性との関わりを描いたエッセイ。
3,食と人生をテーマに活動する宮浦宣子が、釜ヶ崎でおこなった「おかゆのしあわせ」講座での出来事などを、食材が一人称で語るエッセイ。

デザインは鮮デザインの木村泰子。繊細な色合いが特徴。折り方も工夫が必要で、釜ヶ崎に暮らすおじさんたちが中心になって折り、その日集まって一緒に作業をした旅人や若者たちと交流が生まれた。また、視覚障害の読者がいたころから、モノクロ反転版のデータも作成した。

今後の展開

この企画の発端は、地域の医療者が、利用者との接続点を専門性だけでは難しい、と話してくれたことにあり、地域の中で横断的な関わり、柔軟な関わりがうまれることに大きな意味があると考えます。
けれど、それぞれの仕事の役割があるなかで、どのように集中力や時間を使うのか、制度を弾力的に運用できるのか、お金は?といった具体的なことへ落とし込みが必要だと思います。
私は社会に伝える「ことばを書く」ことを仕事だと考えていたため、助成金をデザインと印刷費にあてさせていただきました。いざ、書こうと思った時に、たったひとりでは締め切りを守れないことに気づき、ちょうどフローぺーパーを出したい人、原稿を書きたい人がいましたので、仲間に招き入れました。こうやって広がりが生まれたことで、また何かが動き出しました。
たった3回のフリーペーパーで社会に伝わる、とも、社会が変わる、とも思っていませんが、けれど、小さな小さな小さな一歩でも踏み出さないことには、どこにも到着できません。専門性とも手をつなぎ、素人だと言ってひるむことなく、さまざまな多様な人たちが関わることで、地域の力、社会の力は分厚くなっていくと考えます。

添付資料