活動報告
北から南から 各地の動き
さわやか福祉財団では全国各地の助け合いの創出、
住民主体の地域づくりの推進を支援しています。
その取り組みの一部をご紹介します。
2024年10月1日~10月31日分
SC=生活支援コーディネーター
3ステップ=ステップ①体制づくり、ステップ②ニーズと担い手の掘り起こし、ステップ③助け合い創出
SC研修・情報交換会等に協力
千曲市(長野県)
10月29日
千曲市の第2層圏域では、公募した住民のSCと市社会福祉協議会職員の兼務SCが配置されている。最近、第2層SCの一部に入れ替わりがあったこと、取り組みがあまり進んでいないことなどから、一度基本に立ち返り、担当地区の進め方をあらためて考える機会とする目的で「SC研修会」が市社協主催で開催された。
午前を基礎編(事業の背景、制度概要等)、午後を実践編(活動創出方法、各地の事例等)の構成とした。冒頭、参加者から自己紹介とあわせて「SCとしてやりたいこと。現在の地区の課題」を話してもらうなど、できるだけ対話の機会を設け、それぞれが課題解決のヒントを持ち帰れる場となるようにした。1日研修では伝える情報量が多くなるため、参加者が内容整理に時間がかかる傾向がある。そのため、質問等についてはメールなどで後日にも受け付ける形とした。
今後は各担当地区で実践しながら、活動の立ち上げ手法についても随時見直し、検討していく予定である。(髙橋 望)
協議体の活動・編成等に協力
岩見沢市(北海道)
10月25日
岩見沢市で生活支援体制整備事業第2層協議体発足に向けた勉強会が実施され、第1回は北海道のさわやかインストラクター丸藤競氏が講師で事業の必要性・本質・考え方を学んだ。今回の第2回は当財団が講師で、協議体の具体的な立ち上げから活動創出までの具体的な取り組みついて講義を行った。
第1回後の参加者の反応として「町内会単位で活動が活発なところをモデルケースとして実施するのはどうか」等の具体的な意見もあった。それらを受け、第2回ではあらためて事業の理解と群馬県高崎市の取り組みを紹介し、グループワークを行った。
参加者のアンケート結果は主に以下の通り。
・協議体立ち上げについて具体的な事例を聞くことができてとてもよかった。
・近所付き合いを大切にしようと思った。
・雪と送迎の課題が多い印象だが、事故も心配であまり手が上がらなさそう。どう課題解決しているか気になった。
・もっと担当地区について知りたいと感じた。地域での役割を考えたい。
・日頃、業務内で地域のことや目指す姿などについて話し合うことがないので、とてもよい機会だった。内部で何を優先すべきか考え、地域を巻き込んで地域づくりをしたい。
・生活支援体制整備事業をイメージできた。
・目指すまちづくりを部署内でも話し合っていきたい。
・「目指す地域像」がぼんやりしていたが、今日の講義とワークを通して、このように引き出していくのだと思った。住民の中に入り、たくさんワークをして目指す地域像を考えていけたらと思う。
今後、同市ではワーキンググループをつくり第2層を立ち上げていく予定で、当日のアンケートで5名の参加希望者がいた。(目﨑 智恵子)
地域支援団体ネットワーク会議に協力
岬町(大阪府)
10月31日
岬町で行われた、令和6年度地域支援団体ネットワーク会議企画「住民主体団体情報交換・交流会」に当財団も協力した。地域支援団体のネットワークの継続・強化をテーマに、①岬町内で活動を行っている住民主体の団体の情報交換・交流を通じて、地域の誰でも参加できるよう、また、高齢者等の暮らしを支え合い、助け合う活動が広がるよう底上げを図る、②住民同士が声がけをし、お互いの活動を後押しする等住民主体の地域づくりに向けて行う、③介護予防等社会資源の創出につながるよう共通認識の向上を促進する、を目的として実施された。参加者は、地域活動団体のメンバー、協議体メンバー、行政、町社協。
財団より「自分が支える地域は、自分を支えてくれる地域」と題して講義。次に、8団体から住民主体で行っている活動の内容、工夫していること、苦労していることについて紹介。住民の思いが詰まった活動が紹介された。
その後、グループワーク。テーマは、①5年後どういう地域になっていればいいのか、②自分たちで立ち上げていった活動が5年後どうなっていったらいいのか、③そのためにどうしたらいいのか。気軽に交流できるようお茶とお菓子が出され、和気あいあいと話が弾んでいた。
住民同士が支え合う関係を築くことで、住民自らが生活課題や福祉課題の解決を図ることができる組織や仕組みに取り組んでいる同町。活動者同士の情報交換の場をつくり、支援が必要であるのに声を上げられず困りごとを抱え孤立している人が、地域に受け止めてくれる人や場所ができることで安心して暮らせる共生の町づくりを目指している。このたくましい住民の活動を広げるために、SCや行政、社協が後方支援を行う体制づくりが進んでいると感じる。情報交換の場で住民が主体的に取り組んでいる活動をアウトプットすることで、他の参加者に新たな気づきを生み、つながりが生まれる。たくさんの活動が創出されている同町の取り組みを、引き続き財団も伴走支援しながら、情報を共有・発信していく。(目﨑 智恵子)
ボランティア研修に協力
岩出市(和歌山県)
10月23日
和歌山県のさわやかインストラクター市野弘氏が理事長を務める「NPO法人和歌山保健科学センター」が実施した地域福祉推進事業(地域福祉講座)の3回目に講師として協力した。同講座全体のテーマは 「助け合い、支え合い、ふれあえる まちづくり」。ボランティア団体とのネットワークで地域活動の担い手を養成するため、相互に情報交換と勉強会を行い、共に「支え合い、助け合い、ふれあえる まちづくり」を目指すことが目的。
3回目には25名ほどが参加して、「ボランティアに行けば笑顔に会える」のタイトルで行われ、当財団は第1部で「いつでも誰でも行ける居場所サロン」と題して講義を行った。第2部は、ボランティア活動について市社協と活動実践者から発表があった。
グループワークでは、参加者から「ボランティアについての見方が変わり、自分が何かできることがないか考えた」「他人同士が集まって、良いこと、楽しいことなどをよく知ることができたが、難しいことや問題等も知っていきたいと思った」「前向きな方が多かった」等の意見が聞かれた。(目﨑 智恵子)
アドバイザー派遣事業に協力
鎌倉市(神奈川県)
10月8日
神奈川県のアドバイザー派遣事業を活用した鎌倉市の今年度2回目の支援に協力。対象は第2層SCと行政担当者。市、県と事前打ち合わせを重ね、講演と意見交換を行った。
目的は、第2層SCとしての「地域づくりの仕掛け」について市が事前アンケートを取り、その内容から、「地域の担い手づくりの確保」と「居場所づくりのノウハウ整理」に焦点を絞り当財団からも情報提供し、課題解決につなげること。
市担当者の行政説明に続き、財団・鶴山より「地域づくりの担い手の確保」と題して講義。事前アンケートで最も多かった課題である「担い手の確保」について、今年7月の神奈川県SC情報交換会で上がった悩み(①「担い手養成講座修了生が活動の場につながらない」、②「地域住民での新規開拓には限界がある」、③「自治会、地区社協、老人会、民生委員が主となり、担い手が兼務、 固定化している」、④「キーパーソンに頼りがちになり、活動が広まらない」、⑤「若年層への担い手の周知ができていない」、⑥「利用者の増加につながらない」)を示し、助け合いの担い手としての考え方やノウハウを伝えた。サービスではない、助け合い活動は高齢者だけの限定的なものではなく子どもや障がい者も含めた幅広いものであることも押さえた。事例として、エリア別のカルテ作成や対象、座談会の頻度、意欲のある人の勉強会など兵庫県神戸市灘区の事例を紹介し、ヒントとなりそうなことを伝えた。また、地域の現状や覚悟を地域に周知し、委員会を立ち上げたプロセスや若い世代を巻き込んだ実践事例として新潟県新発田市の「川東いきいき大作戦」も紹介した。
講演を受け、参加者が意見交換を行った。有償ボランティアは担い手が高齢化して活動が衰退しているのではないか、との質問に対し、例えば過疎が進む地域で町内会単位で有償ボランティアが立ち上がっている事例を紹介。家族機能が低下し続ける今後、ますます生活支援が必要になってくるのではないかと伝えた。質問者から、参考になりそうなデータを提供してもらいたいとの要望もあった。居場所を立ち上げたい人が動き出しているが、先頭に立ってくれる人がいない、との質問に、場所があるのは大きなチャンス。例えば勉強会等を実施して仲間づくりもできると提案。人と人とのつながりが希薄になった現在、共生型常設型居場所はいろいろな人の出会いやつながりをつくり、役割が生まれることを伝えた。
同市では多様な居場所が広がっていることから、鶴山より「居場所を始めたい人に向けての4つの分類」を例示し、その背景や活用について説明。鎌倉市向けに整理してみてはどうかと提案した。(鶴山 芳子)
越前町(福井県)
10月8日
越前町では、5番目となる第2層協議体の立ち上げを目指して、四ヶ浦地区の住民有志が参加する勉強会(協議体準備会)を開催している。この勉強会は3回連続で開催し、協議体への参加を自身の意思で示した住民で編成しようというもので、今回は最終回の3回目となる。
約20名の住民が集まった勉強会は、最初にSCによる「これまでの勉強会の振り返り」、次に財団から「協議体の具体的な活動」を説明、これらを踏まえて「活動創出に向けて自分たちでできる具体的な取り組み」についてグループワークを行った。グループワークは時間の経過とともに熱を帯び、最後には「この話し合いの場は地域の宝だ」との発言も出てきた。
今後は速やかに、参加意思を示した住民を中心に協議体を立ち上げていく予定。(髙橋 望)
市川三郷町(山梨県)
10月11日
山梨県のアドバイザー派遣事業で、市川三郷町を支援。同町は昨年度、フォーラムから勉強会を重ね、主体的な住民で第2層協議体を3地区(旧町単位)で立ち上げた。その後、第2層協議体「支え合いを考える会」をそれぞれの地域で2回開催して助け合いを広める理解を深め、ニーズについて話し合ってきた。今回は3地区の協議体が集まり、それぞれの地域の状況を共有して具体的な取り組みの計画を話し合うことを狙いとし、3回目の「支え合いを考える会」が開かれた。なお、協議体は勉強会から思いのある人たちが中心となり動き出しているが、随時参加を呼びかけながら進めている。
今回の目的は、①1・2回目を踏まえ、支え合い活動を広める上で、自分に出来ること、自分の所属する団体で出来ること、呼びかけたい他の団体等があるのか整理を図る ②住民が主体となった助け合い活動の創出 ③継続的に支え合い、助け合いの視点から地域づくりを考える場を広める。
冒頭、行政からあいさつとオリエンテーションが行われた。次に第2層SCの一人である佐野泰史氏が、1・2回目の振り返り、各地区の特徴やあったらいいなと思う活動について、実施してみての気づきなどを報告。また、各地区から住民代表1名ずつが活動について発表した。
次にグループワーク「こんな活動を始めたい」を実施。各地区に分かれ、あったらいいなと思う活動の具体化に向けてワークシートを基に話し合い、取り組みの目的や対象、企画案作成等を行った。
発表を受けて当財団より、発表された内容と次の展開に向けて「第2層協議体を中心とした助け合い地域づくりの推進に向けて」と題し情報提供した。協議体の役割は「助け合いを広めること」とし、そのために、1・住民のニーズを掘り起こす(何を求めているか、何に困っているか、真のニーズとは何か) 2・仲間づくり(理念に賛同する仲間を広げる。仲良しクラブではない、理解者を増やす)について事例とともにポイントを伝えた。最後に、住民主体の助け合い活動が広がっていくことによる効果についても事例を交えて伝え、「協議体メンバーの人脈や知恵を生かし、みんなで取り組み、地域の住民に働きかけてみよう! 行動あるのみ」と伝えた。
アンケートには、「3地区の差が出ていた→課題が異なる→活動が異なる。地区の特性に応じた活動が始まるとよい」「仲間を増やす。担い手を確保すること。難しいけど、やる気のある人からスタートできればと感じた」「住民が何に困っているのか、多様な内容の中で、目的や理念に賛同する仲間を広げ、自由に利用でき集える場所・拠点を設置して、私はこんなことをしてほしい、こんな手伝いができる・したい、何でも気安く話ができる雰囲気づくりからスタートして進めてみることの大切さを学んだ」等の感想があった。
協議体の立ち上げを充て職にせず、勉強会で理解を深めながら気持ちのある人たちで立ち上げ、仲間を広げて取り組んでいるためか、情報提供しながら話し合ってもらうと活力がアップし、具体的な行動が始まると感じた。地域に働きかけていくこれからの動きに期待が持てると実感した。(鶴山 芳子)
鯖江市(福井県)
10月19日
公民館区に第2層SCを配置している鯖江市では、順次、第2層協議体を編成しているところ。今回は、協議体の立ち上げに向けた河和田地区での住民勉強会(協議体準備会)の2回目。
公民館長からのあいさつ・趣旨説明に続いて、地域担当SCから前回の勉強会の振り返りが行われた。当財団からは、住民主体の活動が立ち上がっていくプロセスを説明した。グループワークでは、「今ある取り組みと、これから必要なこと」について、時間を延長しながら話し合った。
勉強会の開催回数は参加者の反応を見ながら調整する計画だったが、今回の様子から次回3回目を最終回とし、参加者に協議体への参加意向を確認して第2層協議体を編成していくこととなった。(髙橋 望)
西海市(長崎県)
10月20日
西海市大島地区で西海市全体の市民フォーラムが開催され、大島地区を中心に市内全地区から200名ほどの住民が参加した。企画運営は市地域包括支援センター、第1層SC・協議体、第2層SC、市社会福祉協議会。同市は第2層エリアごとに年1回のペースでフォーラムを開催しており、今回が4回目。コロナが収束してきた昨年度からは市全体に呼びかけて開催してきた。フォーラム後には4回の勉強会を重ね、居場所や生活支援などが立ち上がり始めている。
最初に杉澤泰彦市長と協議体会長からあいさつがあり、行政による市の現状と課題の説明があった。続いて「広げよう つなげよう 地域助け合い~自分たちの住む地域を、自分たちで良くしていこう~」と題し、当財団が講演した。4年前のフォーラムから住民のニーズや思いを掘り起こし、勉強会で種をまき助け合い活動が広がり始めているが、喫緊の課題である移動支援について、勉強会も始まっているがなかなか活動が立ち上がらないとのこと。制度は住民主体で取り組みやすくなってきている実情を伝えながら、助け合いで移送支援に取り組んでいる事例を紹介し、タクシーではない助け合いの範疇で取り組んでいることや、そのための勉強会や試行等も行い、不安を払拭して取り組んでいることを伝えた。
「今は乗り合っているから移動支援はいらない」という市内の住民たちの声を紹介し、人と人とのつながりや信頼関係がまだまだあることは西海市の強みであることや、強みを生かしながらさらに若い世代までのつながりや信頼関係を広げていくことも重要、と話し、他県の世代を超えた話し合いの事例を紹介した。
パネルディスカッションは財団の進行で、第2層SCと地区ごとの助け合い実践者にそれぞれの取り組みを発表してもらった。取り組んでいてうれしかったことなどを紹介してもらい、課題についてSCがどう関与して解決していくかなど、「助け合いを広げること」を目的に行った。発表者のいきいきとした表情と発言に会場から「頑張れ~!」と拍手が起こったり、市への要望については市長が手を挙げて応えるなど、和気あいあいと進行した。
同市は11月から月1回の勉強会を4回開催する。継続して地域に働きかけ、まいた種が芽を出し花を咲かせ始めている。また、協議体やSCの理解とモチベーションもアップしてきていると感じる。これからも応援していきたい。(鶴山 芳子)
東彼杵町(長崎県)
10月31日
東彼杵町では、昨年度の勉強会を経て立ち上がった第2層(2圏域:彼杵地区と千綿地区)が動き出している。4月末の勉強会で「自治会ごとの座談会を推進していきたい」と他県の事例を学び、その後、第1層SCが各協議体を支援して計画が進んでいった。この日は各協議体が取り組みを発表して共有。その後の展開をより良くしていくことを目的に「第1層・2層協議体合同会議」が開かれた。
行政担当課長からのあいさつの後、第1層SC末竹將司氏が協議体を中心とした活動の目的を共有し、各地の取り組み状況を説明。彼杵地区と千綿地区の協議体代表者が、取り組んでみての感想や課題などを熱く報告した。
2地区の協議体は、圏域の中の地域(自治会単位)を決めてそこで多世代の交流と座談会を実施。実行したことによる達成感、参加した住民たちから喜んでもらった高揚感いっぱいでの発表は、他地域の参加者にも響いた。千綿地区では準備中だが、課題として「費用をどうするか、予算をつけてほしい」との要望が出された。
発表を受けて、当財団からの情報提供は再度、原点を確認しながら次の展開に向けての参考事例を紹介した。さらに、
・目指す地域像を共有してみる
・話し合うテーマ(課題等)を具体的に挙げてみる
・テーマに対して何ができるか、未来へのアイデアをさまざまな世代で話し合ってみる
・実現に向けて何から取り組んでいけばよいのか、「やってみよう」に向けて計画し実行へ!
ということを提案した。
いつの間にか食事会が目的になってしまっていないか。目的は、目指す地域像の実現に向けて地域の困りごとを出し合い、その解決に向けて話し合うことではなかったか。ブレないようにバックアップしていく協議体の役割も共有した。
「『目指す地域像』をもう一度話し合ってみたい、そこから始めたい」などの意見も出された。SCもバックアップしながら、さらなる座談会が町内のいくつかの地域で進んでいく予定。(鶴山 芳子)
(本稿担当は、髙橋望、鶴山芳子、目﨑智恵子)