活動報告

北から南から 各地の動き

さわやか福祉財団では全国各地の助け合いの創出、
住民主体の地域づくりの推進を支援しています。
その取り組みの一部をご紹介します。

2024年12月1日~12月31日分

SC=生活支援コーディネーター
3ステップ=ステップ①体制づくり、ステップ②ニーズと担い手の掘り起こし、ステップ③助け合い創出

住民に参加を呼びかける支援
(住民対象のフォーラムや勉強会の支援)

葛城市(奈良県)

12月15日

 地域の支え合いの重要性や生活支援体制整備事業の周知等を目的とした葛城市の住民活動発表会「みんなでつくろう!助け合いのまち」が開催され、市民や奈良県内市町村社会福祉協議会職員など125名が参加。当財団は基調講演の講師およびアドバイザーとして協力した。

 開会にあたり、阿古和彦市長が「葛城市の取り組みは全国でも参考とされており、社協職員が全国に出向いて本市の取り組みについて話すことが増えてきた」と関係者の取り組みを評価。今後ますます住民主体の助け合い・支え合いが重要になってくる、とあいさつした。

 続いて、財団から「みんなでつくろう!助け合いのまち」と題して基調講演。高齢者を支える日本の現状、地域包括ケアシステム、社会参加・介護予防・生活支援、事例について、特に、生活支援は自分事にしてほしいことを話し、地域で支え合っていく大切さを伝えた。また、住民主体の助け合い活動を紹介し、「みんなで助け合う葛城市を目指そう」とメッセージを送った。

 活動報告とパネルディスカッションは葛城市の第1層SC田口研一郎氏がコーディネート。「地域交流会KOKOUS」の大学生によるモルックを通じた活動、「西室サロン アルカスの会」のサロンにおける多様な取り組み、「大畑まぁるい会 芽ぶき」の有償ボランティアや住民のための勉強会等が報告され、当財団からは各団体代表者3名に活動をやってみての心の変化や状況を聞いた。

 KOKOUSの中村陽紀氏は「新たな出会いがあり、『ありがとう』と言ってもらえた。福祉の入口を広げることができたと思う」、アルカスの会の下田美芳子氏は「最初は気持ちが定まらなかったが、やると決めたら楽になった。思いを行動にでき、以前よりみんな健康になった」、大畑まぁるい会の多根成弘氏は「社協の研修を受けて『やってやるか』の気持ちから『させていただく』に変わった。よその地区が苦しんでいたら助けに行きたい」と述べた。

 財団からは「まずは一人ひとりの小さな一歩が大切で、『助けて』と言える葛城市になってほしい。世代を越えた助け合いを実現し、お互いさまで助け合う葛城市を目指して頑張っていただきたい」と伝え、田口氏は「他地区や他の人だからできるのではなく、自分の地域で何ができるかを考えてほしい。皆でおしゃべりして伝えれば可能性が広がる。今日のヒントが一歩になれば」と呼びかけた。(目﨑 智恵子、窪田 健二)

敦賀市(福井県)

12月7日

 敦賀市では住民中心で構成する第2層協議体を編成してきており、粟野地区で協議体の発足を目指した協議体準備会(住民勉強会)が開催された。複数回の住民勉強会を開催して協議体参加者を募る計画だが、まずは広く住民の関心を高め、理解を深めるために、勉強会に先んじて地区フォーラムを開催することとなった。

 この日開催された「粟野地区支え合い地域づくりフォーラム」は、同市の状況について第1層SCから説明、支え合い・助け合いの必要性を当財団から伝えた。続いて「助け合い体験ゲーム」を行い、参加者と意見交換を行った。アンケートでは「自分の地域でもできることはたくさんある」「楽しく地域づくりをしていきたい」「もっと『助けて』と言えるようになりたい」などの声が上がっていた。(髙橋 望)

SC研修・情報交換会等に協力

北摂地区(大阪府)

12月9日

 生活支援体制整備事業に係る市町を越えたネットワーク構築や連携等を強化することを目的に、大阪北摂地区(大阪府豊能・三島高齢者福祉圏の7市3町)のSC情報交換会が行われ、当財団も協力した。
 参加者は、豊能・三島地区第1層・第2層SC約20名、大阪府担当者。
 財団の助け合い推進パートナーで同府吹田市社会福祉協議会の新宅太郎氏より「ぜひ意見交換して交流し、今後の活動に生かしてほしい」と話した。
 次に財団・目﨑より総合事業ガイドライン改正等について解説。事業の目的は「みんなで決めた地域のあるべき姿を達成すること」で、そのために体制整備事業を活用することを説明した。
情報交換は、①居場所づくり、②高齢者の担い手、③協議体の運営、④有償ボランティア、の4グループに分け、メンバーを入れ替えて2回行った。各グループとも好事例や苦慮していること、課題等を打ち明けつつ、助言や解決策の提案等をざっくばらんに話し合い盛り上がりを見せていた。
 居場所づくりや担い手発掘に関して、男性の参加者を増やすためには「目的」を明確にすることが重要だという意見も出ていた。(目﨑智恵子、窪田健二)

岩手県

12月16日

 岩手県主催の「SC連絡会」が開催され、当財団も協力。約40人が参加した。
 事前アンケートを取り、「住民主体の地域づくりの推進」「協議体の役割」「ニーズの掘り起こし」「担い手の掘り起こし」「助け合いの創出」「さらに広げるために」について、地域支援事業の要綱改正等を視野に入れ、また、全国の事例を入れながら財団が講演した。
 同県洋野町からも事例発表が行われた。第2層SCがアドバイザー派遣を活用してフォーラムや勉強会を重ね2層づくりを推進し、除雪ボランティアが立ち上がり、ふれあい農園の居場所等も立ち上げている事例。アドバイザー派遣の活用例として紹介された。
 地域での住民座談会やニーズと担い手の掘り起こしのきっかけに、また、アイスブレークにも活用してほしいと「助け合い体験ゲーム」の活用についてレクチャーした。SCら仕掛ける側としての進め方、落としどころ、ポイントなどを実践しながら伝えたが大変好評だった。
 グループワークは、ゲームの後ということもあり話しやすい雰囲気で活発に行われた。発表を受けてのコメントで財団から、失敗を恐れず実践してみることで、課題も次に向けた光も見えること。助け合いとサービスの違い(例えば、住民それぞれが持っている得意分野を生かすことであり、たくさんの役割が生まれる。住民の力を生かすこと)。助け合いを広げるには住民の力を生かすこと(住民が発言する機会をつくる、住民から住民に呼びかけること)などを伝えた。
 終了後アンケートでは、「住民の人たちへの協議体の説明を変えたいと思った」「まずは市民への説明が大切。そこから理解してくれる人を見つけることが大切ということを感じた」「声を出しにくい人も参加できるのがいいと思った。とても良いゲームだと思います」「休憩時間含め、他自治体の様子を聞けたことがとても有意義でした」等の反響があった。(鶴山 芳子)

豊島区(東京都)

12月16日

 豊島区令和6年度生活支援体制整備事業SC研修会が開催され、当財団が講師を務めた。参加者は第1層・第2層SCの計8名。この研修会は、第2層SCの技能向上とネットワーク形成のために毎年実施されている。
 今回はより実践的な研修となるよう、参加者に「事前アンケート」を実施して現状の課題を挙げてもらい、課題へのヒントとして講義を行った。その後、グループワークで現状の取り組み共有と課題解決に向けた意見交換等を行った。
 グループワークは少人数で行ったことや、事前アンケートから現状の取り組みと課題をまとめていたこともあって各グループとも活発な情報交換となり、参加者は大きなヒントを得たようだ。また、グループごとの情報に偏りがないよう、最後に全体発表で共有した。
 発表では、第2層SCの役割の捉え方や、ラジオ体操など高齢者が比較的参加しやすい活動を盛り込んだ集いの場の取り組みが共有され、そうした場での自然な見守りや支援が必要な人の早期発見につながった事例が紹介された。また、リーダーとなる人がいない、会場となる場所がない、関係機関との連携が難しいといった課題に対して、参加者が“お客様”にならないように働きかける、会場設定や場所に行くための負担の少ない小規模サロンを増やしていく、大学生など若い世代には活動内容も自分たちで考えてもらうことが成功体験となり活動継続につながった、といった課題解決のヒントとなる事例の共有もあった。
 施設、学校、企業等の活動場所や人材が豊富という都市部ならではのメリットを生かし、今回得た情報も活用しながら、さらなる地域づくりの充実・発展が進むことを期待したい。(岡野 貴代)

長崎県

12月18日

 長崎県内の市町職員とSCを対象とした情報交換会が行われた。昨年8月に1回目を行っており、今回は2回目。1回目の参加者アンケートで「情報交換の時間をもっと取ってほしい」との声があり、今回はグループワークを長めにしたプログラムとなった。今回の事前アンケートでは「地域全体での活動、自身が最近取り組んでいること」「地域や自身の抱える課題」「今回の研修で学びたいこと、他の参加者と情報交換したいこと」について参加者から聞いた内容を資料としてまとめ、当日配布、グループワークの材料としても活用された。
 県からのあいさつとアドバイザー派遣の状況報告等に続き、財団から「これからの地域づくりを地域の中から考える」として講演した。制度や地域が変化する中で、今まで取り組んできたことを変えるのではなく、やってきたことや地域の強みを生かしながら、新しい事業も活用していくこと。サービス作りも重要だが、地域での人と人との関係性を広げることはますます重要になること。そのためにも住民の力を生かすことが大切で、その方法はさまざまだがどの地域でも重要であることを伝えた。そのうえで、事前アンケートからの課題:SCの体制、協議体(立ち上げ、機能)、ニーズの掘り起こし(方法等)、住民主体(我が事化、助け合いの必要性の理解、働きかけ方等)、担い手の掘り起こし、居場所(男性の参加)、仲間づくり、活動の継続、ネットワーク等について、ポイント、事例、手法を伝えた。
 その後、グループワークを2回、メンバーを入れ替えて行った。1回目は行政、第1層、第2層に分かれたことで、同じ立場での共通課題を話し合うことができ、良い情報交換になったようだった。2回目終了後に全体発表で共有し、最後に財団より、①情報交換で得られたノウハウやヒントは、持ち帰ったら実行してみよう、②住民主体の活動は管理するものではない。信じて任せてみることが大事、と伝えた。
 終了後アンケートには、「住民の意識改革が重要ということに共感。一歩ずつ住民と共に進めていきたい」「『住民を信じる。気持ちのある住民はどの地域にもいる』という言葉で初心に戻ることができた」「人を集めようとするのでなく、行きたい居場所をつくる」等の意見が寄せられた。グループワークも好評で、「得意なことをしてもらう」「男性の参加」「地域座談会」「さまざまな課題解決が参考になった」「自分の市町の強みも確認できた」等の意見があった。
 2月には、助け合い(有償ボランティア、居場所、移動支援、企業との連携等)の実践報告を基にしたテーマ型研修会を予定している。(鶴山 芳子)

SC・行政職員研修に協力

京都府

12月10日

 京都府において、市町村担当者とSCのネットワーク構築と、各地域の取り組み状況を共有して各市町村における生活支援体制整備事業の推進を図る目的で、SCや行政職員を対象とした生活支援体制整備事業推進研修が行われ、当財団も協力した。関係者を含め、参加者は約50名。
 府からのあいさつに続き、財団・目﨑より講義。生活支援体制整備事業において行政とSCが協働することの重要性等をデータとともに説明した。
 事例紹介は、京都市山科区社協より「花壇プロジェクトからひろがる参加のカタチと繋がりづくり」、群馬県南牧村社協より「人口1500人規模の村での取組と課題」。その発表を聞きグループで感想や課題を話し合い、質疑応答でも活発な意見交換が行われた。(目﨑智恵子、窪田健二)

協議体の活動・編成等に協力

敦賀市(福井県)

12月21日

 敦賀市粟野地区で、第2層協議体編成のため「支え合い井戸端会議」と名付けられた住民勉強会の第1回目が開催された。第1層SCから12月7日の地域づくりフォーラムの振り返り、当財団から助け合いの具体的な取り組みについて説明した。
 続いて「目指す地域像と地域に必要な活動」をテーマとしてグループワークを行った。この勉強会は全3回を計画しており、3回目のアンケートで協議体への参加意思を確認し発足させる予定。今後、できるだけ早期に同地区の第2層協議体を立ち上げていく。(髙橋 望)

天童市(山形県)

12月24日

 第1層SC1名、第2層SC1名で生活支援体制整備事業を推進してきた天童市より、第2層協議体づくりに着手したいと当財団に相談があり、第1層SCと準備を重ね、この日、第1回勉強会を実施した。第2層協議体のエリアは中学校区4圏域とする計画で、今年度は第三中学校区に対して3回の勉強会を開催し、民意に沿って協議体を立ち上げていく予定。
 この勉強会の開催は、これまでの地区社協、民生・児童委員、福祉推進員、自治会、老人クラブ、いきいきサロンなどに加え、地域づくり委員会(公民館)、食生活改善推進員、婦人会、地域カフェ等にも声をかけて周知。「地域の支え合いに興味のある方、地域を良くしたいという思いのある方」と打ち出した。
 勉強会は「なぜ、今、助け合い活動が必要なのかを学ぼう」をテーマとし、行政のあいさつに続き、第1層SC小松さやか氏より勉強会趣旨説明が行われた。講演は、NPO法人ふれあい天童理事長でさわやかインストラクターの加藤由紀子氏による「身近な実践報告~ふれあい天童の活動について~」と、財団による「今、なぜ 地域の中で助け合う関係が必要なのか」。加藤氏から助け合いの必要性と具体的な活動が発表され、心が動いた参加者も多いようだった。財団からは「なぜ、助け合いか」として少子高齢化・人口減少に伴う担い手不足と財源不足の背景、それに伴う地域のさまざまな課題、助け合いの地域づくりを推進する制度について伝え、SCと協議体(特に協議体)は事例を交えて具体的にイメージしてもらえるように説明した。
 ワークショップは「今日の気づき、感想を話してみよう」をテーマに実施。第1層・第2層SC、地域包括支援センター職員、行政職員も各グループに入って進行し、参加者の声を聞いた。全体発表後、加藤氏と鶴山がコメントしてまとめとした。
 事後アンケートでも「住民の皆さんの地域に対する思いを感じることができて大変勉強になった」「地域助け合いの重要性を認識した」「お互い様の精神で自分のできることをやってみたい」などの感想が見られ、機運は高まったようだった。1月・2月の勉強会へつなぐ予定。(鶴山 芳子)

住民活動者向け勉強会に協力

町田市(東京都)

12月4日

 町田市の生活支援団体を対象に、団体の活性化を図るためのヒントとなるよう勉強会が開催され、講師として協力した。参加者は、市内の生活支援団体ネットワークに登録している18団体のうち11団体17名。ほかに行政から3名、第2層SCを担当する高齢者支援センターから10名、第1層SCで今回の事務局である市社会福祉協議会から2名が参加した。
 最初に当財団より、住民主体の生活支援活動の大切さ、特に有償ボランティアが継続的な支援のために必要であることや、活動に伴う課題やヒント等を話した。
 続くグループワークでは、団体共通の課題への対応として、「活動の周知に工夫している点」「新たな担い手の参加に結びついて具体的なきっかけの共有」の2つのテーマについて話し合い発表で共有した。
 活動周知の工夫点としては、掲示板やホームページ等での周知、活動通信やチラシの配布、ケアマネジャーとの連携、クリニック等の協力を得て待合室などにポスターを貼る、等が挙げられた。
 担い手に結び付いたきっかけとしては、イベントへの参加、学生への呼びかけ、個別の声かけ、地域住民向けの交流会・研修会の実施、賛助会員の設定などが挙がった。
 また今回のグループワークをきっかけに、庭の雑草に悩んでいる住民が、自宅を活動場所として開放する一方で居場所に来る人が庭の手入れをするといったつながりもできたようだ。
 今回の研修会の事務局である町田市社協も「生活支援団体ネットワークかわら版」というチラシを作成し、団体周知や担い手募集の後方支援しており、参加者からチラシ配布による効果も報告されていた。

 住民による生活支援が活発に行われている町田市。後方支援として、今回のような生活支援団体のネットワーク連絡会・研修会等も開催され、活動者同士の情報共有やネットワーク形成にもつながっている。さらなる住民活動が活性化を期待したい。(岡野 貴代)

アドバイザー派遣事業に協力

会津坂下町(福島県)

12月10日

 会津坂下町の「支え合いの地域づくり講演会・学習会」(広瀬地区)にて、当財団が講話およびグループワークの進行を担当した。参加者約20名。
 会津坂下町広瀬地区では、コロナをきっかけにサロンが開催されておらず、地域がつながり助け合うことの大切さを理解してもらい、住民主体の活動の再開を支援したいとの思いから、当講演会を開催した。
 講話では、なぜ助け合いが必要なのかを話し、集いの場の効果とともに事例を紹介した。
 続くグループワークでは、「地域の課題」を話し合った後、「課題解決に向けて、どんな集いの場ができるか」を話し合った。
 「地域課題」では、買い物が不便、子どもが少ない、除雪が大変、といった各グループに共通する課題のほかに、近隣のつながりについて、近隣同士のつながりがあり助け合いも行っているという声があった一方で、つながり薄い、これまであった行事がなくなり地域での交流が少なくなった、という声もあった。「どんな集いの場ができるか」については、すでに日常的にお茶飲みをしており、生活支援も近隣で行っているという声がある一方で、既存の行事や趣味で集まった際にお茶飲みを行いたい、乗り合いタクシーを生かした買い物ツアーの開催、活動の具体化に向けた実行委員会を立ち上げたらどうか、といった声が挙がった。
 まとめで財団より、すでに行っている近隣のお茶飲み会はとても大事であり、まだ参加できていない人に向けた周知をしたりしてさらに広げてほしいと話した。また、活動の具体化のために実行委員会をつくる案が挙げられたが、ぜひ希望者で実行委員会を立ち上げ、できることから始めてほしい、と締めくくった。
 地域差はあるものの、近隣同士の助け合いが当たり前に行われていた広瀬地区。しかしながら、人口減少や高齢化などから地域のつながりが以前よりも薄くなっていることへの不安も少なからず感じられた。今回洗い出した地域の強み・弱みを基に話し合いを続け、さらに住みよい広瀬地区になることを期待したい。(岡野 貴代)

(本稿担当は、岡野貴代、窪田健二、髙橋望、鶴山芳子、目﨑智恵子)